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テーブルの下なので、白いテーブルクロスがちょうど隠してくれており、"それ"は二人にしか見えなかった。
ただ単に、奈央子の背中にちょっと触れただけのハズの野城の その左手。
「どうして何それ…私の背中から?いつの間に…」
続けて奈央子が「マジック!?」と問うと、野城は呆れるようにため息を吐き、「そんな訳ないだろう」と言った。
「あの乗組員。さっき君の背中に、さりげなく触れたのを見たんだ。ほら、君の背後側から来ただろう?その時だった。間違いない。君に近付いた"ついで"に、こんなモノを付けてたんだよ」
野城は左手の中に握り締めている"それ"を、指を広げて見せた。
小さくて薄っぺらくて丸い形。銀色。
「一円玉…?」
「いや 違う」
と即答。
「じゃ―…野城くん…それって、一円玉じゃなくて…な」
「盗聴器、だ。
僕の知識が正しければね」
何――… という奈央子の言葉は、声になっていなかった。
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