第34章:咲という人。

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盗聴器。とうちょうき。 またしても聞き慣れない言葉に、奈央子は思わず「と!…」と叫んだ。しかし何とか声をトーンダウンしてから、「どうしてそんな物が?どこから出てきたの?」とヒソヒソ声で聞いた。 「君の服。背中に、首から垂れてるそのリボンの片方の先の裏側に、これが付けられてた」 野城も奈央子の口調に合わせて、ささやくような小さな声でそう言いながら、テーブルの下の自分の手と『盗聴器』をまじまじと見ていた。 「さっき言ったろ?あの人に向かって。『まさか、僕に気付かれないとでも思ったのか?』って」 奈央子の今日の服は、両肩から出ている長いレースのリボンの紐を、襟足の所で、蝶々結びに結んでいた。 リボンは背中の中央まで長く垂れ下がっている。 リボンは普通の服のように薄手の生地だが、幅が長いため、一円玉にも似た その『盗聴器』の大きさに加え、十分に『貼れる』スペースがある。
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