第34章:咲という人。

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「『今は食欲が無いから、後から観光中でも食べれるように、パンをトレーか何かに包んで持って行けるようにして欲しい』んですが」 そのまんま(一部を改正し)言って退けた奈央子。彼女の胸は高鳴っていた。 なぜならこの要望は、『優によるもの』ではなく、『犯人によるもの』。 ――― 「あのさ、ちょっとした頼みがあるんだ」 「え?」 「つっても俺を捕まえてるヤツからの命令なんだけど」 ――― 目の前の人が優を拐った犯人の『仲間(グル)』だと知る訳もない奈央子だが、 自分の発言や行動一つが、優の"運命"に関わっているんだという変な"責任感"を感じていた。 すると奈央子が話し終えた途端、咲は一瞬 無表情になった。 そして、何かを悟(さと)ったような表情になる。
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