第1章

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エレベーターで昇ること最上階。 その時間、二、三分。 エレベーター内で一言も発しなかった受付嬢が、扉が開くのと同時に、 「どうぞ、この奥です」 と、なんとも事務的な口調でそう言った。 だけど、そんな口調なんかより気になったものが…。 「な、なんなんですか、これは…」 扉が開くと、真っ直ぐに伸びる赤絨毯が視界に飛び込んできた。 呆気に取られる俺を尻目に、受付嬢は表情一つ変えず…。 「お気になさらずに。コレはただの社長の趣味です」 と、さも当たり前のようにこう答えた。 「…ただの…趣味って…」 恐る恐る足を踏み入れる。 「…うわッ!!」 足首まで埋まりそうなフッカフカの感触に、俺は一瞬面食らった。 「では、私はここで失礼いたします」 「えっ?そこまで?」 エレベーターから一歩も降りることなく、受付嬢は帰っていってしまった。 ポツリと残された俺に、なんとも不安な空気がのしかかる。 このまま進んでもいいのだろうか…という不安。 この悪趣味な空間や、昨日の突拍子のない言動。 よくよく考えれば怪しくないか…。 もしかして辞退するチャンスは今しかないのでは…。 グルグルと思案するが、いい考えが浮かばない。 「まぁ、ここまで来たんだ。話だけでも聞いてみるか」 フカフカの絨毯に足を取られながも、俺はなんとか進み、これまたご立派なドア前に立った。
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