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「はぁ~…」
デカイ溜め息がひとつ。
「ツカサ…そういう訳だ。契約は半年間。これはオレが預かる」
「…半年…預かる…」
行き場のない両手がワナワナと震えている。
目の前にあるんだし、ここは奪い取って、逃げ出せばいいんだろうけど、それはできない。
常識云々を知らないこの二人のことだ。
きっと、どんな手を使っても俺と俺の宝を強奪にくるはず…。
「陰謀だ…。こうなること分かってて騙したんだな!!最初っから俺を愚弄しようと騙し企んでたんだろ」
「なによ人聞きの悪い」
プゥッと膨れる彼女の横で竜也が笑ってる。
「おまえは面白いヤツだな」
「…ざけんなッ!!」
「けどな、お前に話したことは真実だ」
その真実とやらは、どこからが真実で、どこまでがウソなんだろうか。
「さて…ツカサ」
「な、なんだよ。急に改まって」
「まずはその口のききかただな。目上の者に対して、それではダメだ」
「教育が必要ってことね」
楽しげな彼女の言葉に、ゾクリと背筋に寒気が走った。
「教育…ですか…」
かくして俺のお宝フィギュアは、竜也の地下金庫にしまわれ…。
本格的な執事教育が始まるのだった…。
「ツカサ、騎虎(きこ)の勢い下るを得ずだ」
竜也は、悪戯な笑みを浮かべながら。
「吉田、出掛けるぞ」
吉田さんと一緒に、さっさと部屋を出て行ってしまった。
残された俺は…。竜也の言った意味を考えていた。
『騎虎の勢い…?』
行きがかり上、途中でやめにくいこと…。つまりは事を始めたら、やり通せということらしい。
「事を始めた…それは、執事契約のこと、なんだよな…?」
執事契約が切れるまで半年…。
まだまだ、まだまだ…先は長い。
俺の苦悩と波乱も、しばらくは終わりそうにない…。
今日一の最大級の溜め息をつきながら、俺は竜也の出て行った部屋の扉を、ただ呆然と眺めていた。
【続く…?】
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