最終章

10/10
前へ
/124ページ
次へ
「はぁ~…」 デカイ溜め息がひとつ。 「ツカサ…そういう訳だ。契約は半年間。これはオレが預かる」 「…半年…預かる…」 行き場のない両手がワナワナと震えている。 目の前にあるんだし、ここは奪い取って、逃げ出せばいいんだろうけど、それはできない。 常識云々を知らないこの二人のことだ。 きっと、どんな手を使っても俺と俺の宝を強奪にくるはず…。 「陰謀だ…。こうなること分かってて騙したんだな!!最初っから俺を愚弄しようと騙し企んでたんだろ」 「なによ人聞きの悪い」 プゥッと膨れる彼女の横で竜也が笑ってる。 「おまえは面白いヤツだな」 「…ざけんなッ!!」 「けどな、お前に話したことは真実だ」 その真実とやらは、どこからが真実で、どこまでがウソなんだろうか。 「さて…ツカサ」 「な、なんだよ。急に改まって」 「まずはその口のききかただな。目上の者に対して、それではダメだ」 「教育が必要ってことね」 楽しげな彼女の言葉に、ゾクリと背筋に寒気が走った。 「教育…ですか…」 かくして俺のお宝フィギュアは、竜也の地下金庫にしまわれ…。 本格的な執事教育が始まるのだった…。 「ツカサ、騎虎(きこ)の勢い下るを得ずだ」 竜也は、悪戯な笑みを浮かべながら。 「吉田、出掛けるぞ」 吉田さんと一緒に、さっさと部屋を出て行ってしまった。 残された俺は…。竜也の言った意味を考えていた。 『騎虎の勢い…?』 行きがかり上、途中でやめにくいこと…。つまりは事を始めたら、やり通せということらしい。 「事を始めた…それは、執事契約のこと、なんだよな…?」 執事契約が切れるまで半年…。 まだまだ、まだまだ…先は長い。 俺の苦悩と波乱も、しばらくは終わりそうにない…。 今日一の最大級の溜め息をつきながら、俺は竜也の出て行った部屋の扉を、ただ呆然と眺めていた。 【続く…?】
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

287人が本棚に入れています
本棚に追加