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あの日の俺は、とても大事な用件を抱えて、家からほど近い銀行の前にやって来ていた。
その入口で何度も行き来を繰り返し、中を覗き込む俺の姿はさぞ、怪しく見えていたに違いない。
だが、それにも理由があるのだ。
用件イコール銀行が結び付ける事柄に、借金というフレーズが思い浮かぶだろうが、決して俺は借金の為に銀行内に入るのを躊躇っているわけではないのだ。
「…しかしアレは高すぎる」
大学生になったばかりの青二才、財布の中身に大枚がそうそう入っているわけもなく、まして銀行というデカイ貯金箱にもたいした額も入っているわけもない。
欲しいものがあれば、それこそバイトでもすればいいだけのこと。
むろん、バイトの経験がないというわけでもない。
過去にも何度か短期バイトで働いたことがある。
その時のコツコツと貯めた貯蓄があるのはあるのだが…。
それでは間に合わないのだ。
今、現時点で現なま、いや、現金が欲しい!
たとえ親から学費と称して借金したとしても、アレの金額にはギリギリか…。
いや、足りない可能性が高い。
だが、なんとしても俺は手に入れたいモノがあるのだ。
ここは決断して下ろすべきか…。
決断の時は刻々と迫っていた。
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