最終章

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自動開閉の門扉を通り、長い玄関までのスロープ。 もう胃の不調も限界だと感じた時、ゆっくりと車が停車した。 「さ、降りるわよ」 「…そだね」 ふらつきながら車から降り、重い足で屋敷の玄関扉までなんとかたどり着いた。 ドアノブに手を掛け、開けようとしたのとほぼ同時に扉が開かれた。 「お帰りなさいませ、お嬢様」 どこで俺たちが帰ってきたことがわかったのか、軽く頭を下げ、出迎えてくれたのは吉田さんだった。 「あ…あの…、こんにちは。お邪魔します…」 異様に静まり返る屋敷の中へ一歩、足を踏み入れた俺は…。 「うわッ…な、なんだ…!?」 見えない何かにダメージをくらってしまった。 「…ってRPGかよ…」 変なツッコミをしてしまい、隣の彼女の顔を見ると、なんとも冷ややかな眼差しで俺を見ていた。 「車酔いの次は頭が変になっちゃったの?」 「ち、違う。そんなんじゃなくて」 彼女には分からないのだ。奥の部屋から並々ならぬ邪悪なオーラが立ち込めているのを。 それを俺だけが察し、ゾクリと身震いをした。 「ご主人様が、お待ちですよ、かのか様」 視線も合わさず吉田さんはそう言って、奥の部屋へ行くよう静かに促した。 その態度にも、ヒヤッと背筋に冷たいものを感じる。 「わかったわ。ほら、ツカサも来て」 「…え…ちょっ、待っ…」 強引に手を引かれ、歩いていく先から何やらどす黒い空気が…。 「ヤバくない…?この空気…」 「覚悟決めたんでしょ」 「そ…そうだけど…まだ心の準備ってものが…」 ドアノブを握り締め、俺は固まった。 この先にいるのは竜也に間違いないのだが、尋常じゃないこの空気…。 「俺の勘違いなら訂正してほしいんだけど、この扉の向こうにいるヤツは、確実に怒ってるよね…?」 「そうね。そうかもしれないわ」 平然と答える彼女にもまた、ゾクリと身震いしてしまう。 「そうかもって。どうして…」 「だって…。ツカサとデートしに行くって、置き手紙をおいてきたからよ」 悪びれた様子もなく、これまた平然とそう言って、彼女はニコリと微笑んだ。
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