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その後 優は、一樹理事長と一緒に朝食を食べた。
一樹理事長はまだ、というより ずっと、身を小さく震えさせている。むしろ優よりも怯えている。
仮にも一校の理事長たる人物だ。学校の生徒の身に何かあったら―…という不安は、生徒側の優には計り知れない物なのだろう。
「すまないな、上城くん。私が臆病なばかりに」
一樹理事長はフレンチトーストを頬張りながら、隣の優に小さな声で話かけた。二人は、白い布が掛けられた一つの丸いテーブルを囲んでいた。二人の真ん中の背後には、黒人サム。
「ははは。しゃあねぇじゃん」
「本当に、申し訳ない」
だがその一樹理事長の言葉は、また何か違う『別の事』に対して謝っているように感じられた。
「何だよ。言いたい事あんなら今のうちに言っとけよ。今ならアイツいないし、コイツ(と言いながら、優はサムを親指で差すような仕草をした) も、そこまでニホンゴの分析力ないだろうし、話しても大丈夫じゃね?遺言を残すなら、俺が聞いておいてやるぜ」
レイはシャワーを浴びにバスルームに行っていた。二人の背後には『見張り役』とばかりにサムが座っていた。右手には、黒い拳銃を握りしめて。
「なぜ、君はそんなに余裕でいられるんだ」
「考えるだけ無駄だからだよ」
優は続ける。
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