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「だって、俺。入学したての一学期の頃、チョコ寮で過ごしながらいつも思ってたんだ。絶対あり得ないけど、女の子来ねーかなーって。そしたら、ビックリ。二学期から、世話人とか言う名の女の子がマジで入寮して来たし」
一樹理事長は黙って聞いていた。
「だから俺、思ったんだ。もしかすると人生て、考えるように流れてくのかも知れないなって。物事は悪い方に考えりゃ悪い方に進んでくし、良い方に考えりゃ、不思議と上手く行く事だってある。だから、どうせ考えるなら損じゃん?悪い方に考えてたら、何より しんどいし」
優はサラダを頬張った。一樹理事長は一瞬驚いていたが、すぐにフッと笑った。
「その通りだな、上城くん。だが私は、考えても救われない事だってあるんだよ。大人になれば分かる。そういう気休め程度になるのは子供の内だけだ」
「今なら聞くぜ。遺言は早めにな。アイツがシャワーから戻って来ない内に」
一樹理事長は、廊下で繋がっている一つ向こうの洗面室を振り返り、まだレイが戻って来なさそうである事を確認した。
水が流れる音が微かに聞こえる。だが、まだまだ戻って来そうにはない。
一樹理事長はウンと頷いてから、口を開いた。
「まず、レイの事だ。
私は、そもそも昔からレイを信頼していたんだ。まさかこんな極悪人だとは、知るよしも無かった」
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