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「さて、どうするかなぁ」
ラテン調の音楽が流れている。
船内はどこも、一般客で溢れ返っていた。苺学園の生徒たちは皆、観光に出かけて行ったとはいえ、賑やかさは変わらない。
奈央子が今いるのは、船の端の通路。ベージュ色のフローリングが一面に続いている。建物の外なので屋根はなく、冬の太陽が照らしており、午前ということもあって明るい。隣の壁は、建物の窓だ。中にも同じく廊下があり、そして客室のドアが並んでいる。
奈央子と同じ方向に歩く人、向こうから逆方向に歩いてくる人。所々に木製のベンチがある。長い長い通路が船の端から端まで続いているのだ。
左側は海、右側は船の建物。客室の窓が並んでいる。
てく てく てく…。
「どうしよう。どうやって優を…」
とその時
「お客様」
聞き覚えのある声がした。一瞬、優と似ていたので、ドキっとした。
奈央子が振り向くと、
「お客様。少しお時間よろしいですか?」
咲だった。
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