エピローグ

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「柔道と言えば、葵さんはかなりの腕前なんですね? 暗闇の中で、男性に挑みかかられても投げ飛ばして、逆に寝技に持ち込める位なんですから。あれは送り襟絞めですか?」  柔道の寝技の一つ、胴着の襟を使って相手の首を絞める技の名前を挙げる。 「はい。あの時はちょうど初段に上がったばかりでしたが、運良く」  先ほどの話を聞いた後だと、運良くと言う言葉が重く感じる。 「そうなんですね。暗闇の中でよくできましたね」  それでもわざとその言葉は軽く流し、質問を続けた。 「あの時、スイッチに近づくのに気がついたので、たぶん電気を消してそのすきに飛びかかろうと考えているんだろうなと分かった物ですから、事前に片目をつぶって準備をしておきました。どの程度の効果があるのかは分かりませんでしたが」  葵さんはそう言って軽くウインクをしてみせる。暗闇になれるために事前に目を閉じるというのはよく聞く話だが、とっさにそんなことはなかなかできないのではないだろうか。少なくとも僕には思いつかないだろう。先ほどの僕が守るという言葉は少し無謀だったかも知れない。
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