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「ちょっと葵、いつまで待たせるのよ」
扉を開けると、茜さんはそんな言葉と共に部屋に上がり込んでくる。
「茜ちゃん、お邪魔しますくらい言いなさいよ」
葵さんが忠告するが、茜さんは、はいはい、とだけ応え、こたつに入る。この二人の関係性はかなり複雑な物があるなと、今なら分かる気がした。
「それにしても、京助がねえ」
茜さんがにやにやとした笑みでこちらを見てくる。
「何さ」
僕は彼女のためのお茶を運びながら尋ねる。
「いいえ、別に」
「なんだよ気になるな」
僕がおいた湯飲みを手に取り、にやり、という笑みを浮かべる。その笑顔には見覚えがあった。春先、初めての事件の時、この笑顔を見て後悔した記憶がよみがえる。
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