茜の疑惑

23/23
114人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
「だから、警察は自殺として処理をしたと?」 「まあ、そうなるね」 「でも、動機は何ですか? 自殺をするような動機、啓太には無かったはずです」 「お決まりの受験ノイローゼだね」 「またそれですか? 受験生が自殺をしたらすぐそれ、ちょっと、杓子定規過ぎませんか?」 「そうは言われてもね、他に自殺する理由が見つからないんだから仕方ないだろう?」 「なら、自殺じゃ無いんですよ」  茜は言い切る。そして続けて、 「そうだ、遺書はあったんですか?」と尋ねる。 「そこも、自殺説には弱い部分だね。遺書は見つかっていない。ただそうだとして、君には、何か考えがあるのかい?」 「いえ、それはありませんけど」 「まあ、良い、何か思いついたら、この名刺の番号に連絡をくれるかな?」  そう言って児玉は名刺を差し出す。そして、それまで名前を尋ねていなかったことに気がついたのか、 「君の名前は?」と質問する。 「桜井茜です」  刑事の名刺を受け取りながら、茜は名前を名乗った。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!