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新聞やチラシなどの束をそのままの状態で家に持ち込むと、居間のテーブルの上に新聞以外の束を放り出す。しかし、それらの束はばらばらと机の下に散乱した。ソファーで横になっていた茜はその様子に眉をひそめると、一枚ずつ拾って余計なチラシとそれ以外とに選別していく。その途中でぴたりと手を止めた。
驚きで目を見開き、その手にしている封筒を凝視している様子は傍目にも異様だった。茜は言葉も無く顔を上げると、葵に視線を向ける。茜は口だけをぱくぱくさせ、何かを伝えようとするが、のどからは声が出てこない。葵はその茜の様子に気がつき、目をしばたたかせると、立ち上がり、茜の元に近寄る。
「これ」
そんな言葉と共に、封筒を一通、葵に差し出す。葵は首をかしげながらもその封筒を手に取ると、それまで青白かった頬に朱が注す。
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