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葵が部屋に引き籠もってから二時間が過ぎた。茜も政志も葵のことを心配はしていたが、ただ、葵が出てくる時を待ち続けていた。時刻は十二時を回っている。昼食を作る気にはなれなかったので、政志はピザを注文した。茜も二切れほど腹に収める。すると、葵が部屋から姿を現した。泣き腫らしたようにまぶたは赤く染まっていたが、その瞳には力強さを宿していた。
「どうしたの?」
茜が尋ねるが、葵は首を横に振り、代わりに、
「啓太君は自殺なんかしてない」と言い切った。
「さっきの手紙? 何が書いていたのよ?」
その問いに葵は首を振ると、その質問には応えず、
「お父さん、ごめんなさい、お父さんはよくないって言うかもしれないけど、私、啓太君の事を殺した犯人が許せない、どうしても犯人を見つけ出したい」
「葵、落ち着きなさい、私には突拍子もなさ過ぎて、もう少し詳しく話してくれないか? あの手紙には何と書かれていたんだ?」
「そればっかりはお父さんにも話せない。でも、信じて、あれは遺書なんかじゃ無かった。これから死のうとする人が書くような内容じゃ無かったのよ」
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