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茜は町中を走り回っていた。何処かに葵の姿を見つけることができれば、と祈りながら。しかし、葵がどこに行ったのか見当も付いていない状態で闇雲に探し回っても見つかるはずも無い。結局、葵の姿を見つけることができないでいた。
何人かの同級生と行き違ったので葵の姿を見なかったかと尋ねてもみたが、誰も見ていなかった。となると、彼女はこちらには来ていないのかもしれない。もしくは人目を避けるように行動した可能性もあるが、その場合、なぜそんな事をする必要があるのか、その理由を思うと体が震える。
「落ち着け、落ち着け」
茜は自分に言い聞かせるようにつぶやく。まだ何も決まったわけでは無いのだ。慌てても仕方が無い、そう考えてようやく少しだけ落ち着きを取り戻してきた。
「葵はどこに行った? 決まっているじゃないか。啓太を殺した犯人の元に向かったんだ。しかし、それはなんのために?」
茜はその先を考えるのが恐ろしかった。忠告をしたり、苦言を呈しにいっただけであるはずは無い、その目的はもちろん、茜はあえてその先は考えないようにした。
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