対決

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 前方から走ってきた自動車がクラクションを鳴らしながら茜の横を通り過ぎる。いつのまにか歩道のガードレールが途切れ、車道に体の半分が出ていたのだ。慌てて体を引く。続けて後方からヘッドライトの光が迫ってくる。道路上に茜の影と、もう一つ、人影の様な物が生まれる。誰かが後ろから迫ってきているのかと振り返るが誰もいない。自動車の光が照らす中には誰の姿も無かった。いったいどういうことだろう? と首をかしげたところで、後方にあるガードレールに野球帽が引っかけられている事に気がついた。誰かの落とし物を、探しに来た者が見つけやすく、また人に踏まれないようにとガードレールに引っかけて置いたのだろう。その帽子とガードレールの支柱が作り出した影を人影と見間違えたのだと気がついたとき、茜はある考えが浮かび、走り出していた。
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