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目的地に向かう途中に公衆電話を見つけた茜は、児玉刑事から渡された名刺に記されていた携帯電話に連絡を入れ、犯人の目星が付いた事と目的地を伝える。その場所を聞いたとき、児玉は驚いた声を上げ、半信半疑の様子だったが、茜の切実な声による求めに応じ、現地で合流することを約束した。
茜はそれから五分ほどで目的地に到着した。向かっている途中で葵に追いつけないだろうかという望みは叶わなかった。門の外から敷地の中を覗うが、家の中に人のいる気配は無かった。
十二月三十日の午後八時三十四分、普段の茜なら、お菓子でも食べながらテレビでも見ているか、受験生らしく机に向かっている時間だが、この家の住人は違うのだろうか? 窓のどこを見ても電気が付いている気配が無い。もしかしたら家族で外出をしているのかもしれない。もしくは、皆もう眠ってしまっているのか。もし前者なら、葵はあきらめて帰ったのかもしれない、しかしすぐに、そんなはずはない、と思い直す。門柱の前に立ち、そんな事を考えていると、背後から声を掛けられた。茜は飛び上がらんばかりに驚き、思わず悲鳴を上げる。
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