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「桜井さん、僕ですよ」
そう言って顔を見せたのは児玉刑事だった。
「刑事さん、驚かさないで」
「いや、そこまで驚くとは。それよりも、どうですか?」
「それが、誰もいない感じで」
「誰もいない?」
「でも、とりあえず入ってみましょう」
「いや、でもそれは不法侵入という立派な犯罪で」
ちゅうちょする児玉を残し、茜は門扉に手を掛ける。門扉は手応えも無く開いた。
「門扉の鍵が開いているということは、留守かしら」
茜は誰にとも無くつぶやく。そして、ためらいも見せずに敷地内に足を踏み入れた。児玉も、小さなため息を吐いた後、それでも茜の後に続いて敷地内に入り、門扉を閉じた。
「良いんですか?」
着いてきた児玉に、茜が尋ねる。
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