114人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕は、門扉が開いていることが気になってね、不審者がこの家に入っていったのではないかとを確認するために入ったんだよ」
「めんどくさい話ね」
茜はそれだけを言うと、再び歩き出す。しかしふいに彼女は足を止める。そして、振り返ると、耳に指を当てる。何かが聞こえるという意思表示だと思えた。児玉も彼女の意図を察して耳を澄ます。かすかに話し声が聞こえてくる。お互いに顔を見合わせた後、声のする方向に向かう。その声が、一つの窓から聞こえてくることに気がつき、その窓の下へと移動する。窓にはカーテンが引かれていたが、電気の明かりがそのカーテンの隙間から漏れていた。ただ、その隙間から部屋の中を覗いても、話している人物の姿は見えなかった。
茜と児玉の二人は耳をそばだたせた。聞こえてくる話し声はお互いに押し殺しているため、その内容までは分からなかったが、声を押し殺しているが故に危険な空気をはらんでいるように感じられ、茜は思わず息をのんだ。
最初のコメントを投稿しよう!