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しばらく言葉のやりとりが続き、不意に静かになる。そして、突然部屋の電気が消えたかと思うと、中から激しい物音が聞こえてきた。茜と児玉はほぼ同時に立ち上がると、扉にとりつき、開け放つ。暗闇に包まれた部屋の中で、二人の人影が見えた。一人は床に倒れ、一人はその上に被さるように乗っている。その様子に茜は慌てて上に乗っている方の人影に飛びついた。
「止めなさい」
大声で怒鳴り、人影の肩を掴んで引き離そうと力を入れる。布が裂けるような音が響き、その人影は茜と共に床を転がる。それと前後するようにして部屋の明かりが点けられた。
明かりが灯るまでにタイムラグがあったのは、児玉が電気のスイッチがどこにあるのか分からず手間取ったのだろう。煌々とともされた電灯の下で、床に倒れ込んでいた人物は、電気を点けた人物の存在に気がつき、這うようにしてその足下に向かうと、
「刑事さん、助けて、殺される」と訴えた。
「啓太君を殺したのはその人です」
茜が抱きかかえるようにして動きを静止されている人物は、さっきまで自身が床に組み敷いていた人物を指さし、宣言した。
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