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茜に抱きかかえられた体勢のまま、葵はそう宣言した。その言葉は、茜の予想通りの者だった。茜も犯人がその人物だと予測し、この場所にやってきたのだ。しかし、明確な自信があったわけでは無かった。ただ、状況から考えて、その人物が犯人ではないかと予想していただけだった。しかし、葵は確信を持って言い切った。強く閉じられた葵の手には布が握られている。先ほどの格闘で襟がちぎれたのだろう。まだ喉をゼイゼイ言わせているこの部屋の持ち主の服は襟のあたりがちぎれてしまっている。それだけでも、彼女がどれだけの力でその部分を締めていたのかが分かる。
「ふざけるなよ」
犯人だと弾劾された人物は喉を押さえながら、何とか言い返す。
「往生際が悪いですね。あなた以外の誰にも無理なことは証明できるんです」
多少は落ち着いたのか、葵は握っていた手を離し、破れた布を床に置くと立ち上がる。
「冗談じゃ無い」
反論しようとするのを、葵は視線で黙らせ、
「冗談ではありません。証拠もあるんです。それを今から説明します」と宣言した。
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