第1章

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「おふみ~、おふみ、ああ、そこに居たのか。俺の帯どこに行った?」 帯はどこにも行きません。 旦那さまが私を試しているのか、茶化しているのかと表情をうかがうのですが、冗談か本気かもわかりません。 「帯でしたら旦那さまのすぐ足元に。失礼します」 私はそれを拾い上げて、旦那さまに手渡しました。 「さすがだなあ、おふみが居てくれて助かる」 旦那さまが、正直なところ、どうやってここまで生きてこられたのか心配になるほどです。 旦那さまは、見上げるほどの背丈と怖ろしい顔立ちで、最初に遭った時は、このまま取って食われてしまうかもしれないと震えあがったものです。 けれども、足をいためてしまった私を介抱し、こうやって通いの下働きとして雇って下さいました。 病の母と幼い弟妹を抱え、繕いものをして日々をようやく過ごしていた私には、願ってもない出来事でした。
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