第1章

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女に学問は要らないと言われるのが常でしたから、旦那さまはだいぶ変わった方なのだと思います。 見事な手跡だと思ったあの文字は、旦那さまによるものでした。 力強いのにふわりと立ち上がって見えたり、反対に紙の奥深くに静かに沈んでいくような、不思議な文字なのです。 ごくたまにですが、四書五経や唐詩選といった書物に書いてあることを適当に教えて下さることもあります。 面白おかしくて乱暴にも思えますが、堅苦しい書物が、身近になったように感じます。 どういう人なのだろう。 普段のどうしようもない間の抜けたつかみどころのない旦那さまも、自在に書を操る旦那さまも同じ人なのです。
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