花が通りすぎたところ

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☆ ことり 地を這うような生け垣の根元から空へと吹き抜ける十姉妹たちの韻律は グラジオラスが奏でる花々の連なり 雲になり塵になり指に宿る彼女の数多微笑み ことりよことり 握りしめたきみの手の中でぼくを転がし ありふれた露草のブルーと共に ポケットの中にしまっておくれ ・ ☆ おにゆりとことり ねえねえ ことりよ ことりさん あたしの話を聞いとくれ 木の実探しの途中だろうが 風が変わるまでのあいだ ほんの僅かでいいんだよ あたしの側にいてくれないかい ねえねえ かわいい ことりさん 鉄錆じみた肌色と雀斑だらけのしゃくれたこの顔が怖いのかい 大丈夫 捕って喰ったりはしないからさ うん 自分のことだからね あたしゃ、よくわかってるんだよ 別にたいした器量じゃないし 胤なんぞ婚いてくれる花なんか遂にいやしなかったけれど マリア様でもあるまいにさ・・ おかしいよねえ かざみの下に零余子ムカゴができたんだよ あたしが萎んで枯れた後 この子がその土の上に落ちて生まれるのさ ねえ ことりさん あたしはね 花なんかに生まれてきてほしくはないんだよ ・
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