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箱の錠前を持ち、久美子が黙ってダイヤルを回し始める。一つ動かしては鍵を引っ張り、開けようとしていた。どうやら全ての数字を試そうとしているようだ。
そんな久美子の横を通り、弥彦は黒板の前に立った。黒板に書かれた文字を眺める。
『三人の頭を集めて箱に入れろ』
白で書かれたその文字の端を、弥彦が指で擦る。擦った部分は消え、弥彦の指に移った。
「これって何なんだ?」
指の汚れを叩き落としていた弥彦が誰にともなく呟く。近くにいて聞こえた久美子が、錠前から顔を上げた。弥彦は久美子に背を向けたままだ。
「三人ってたぶん俺らのことだよな」
「たぶんね」
「頭を集めて箱に入れろってどうやってだ? ここには刃物なんてないのに」
「ちょっと。物騒なこと言わないでよ」
弥彦の言葉に久美子が嫌な顔をした。
「殺し合いをさせるのが目的なら、普通はそれなりの道具を用意しておくよな」
「そんな普通なんて知らないわよ」
「箱だって鍵をかける意味がない」
「それは……。そうね。実際にこうやって開けるのに時間がかかっているし、何だか遠回りな印象」
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