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「教室にある丸いものか」
三人は教室を見回す。三人からは後ろの黒板や教室に並ぶ机が見えた。目ぼしいものは見当たらない。
「掃除用具入れの中は空っぽだったよ」
「机の中もあの本が出て来た以外は空だった」
「丸いものって意外にないな」
キョロキョロとしながら、三人は段々と後ろを向いていく。
「あ、時計は?」
志郎が黒板右上の時計に気が付いた。
「円盤だな」
「時を刻んでもいるね」
三人で時計の前に立った。
「刻みし円盤が時計だとすると、示している場所ってどこだ?」
「針が向いている方向かな? 時計は止まっているし」
久美子が針の先を辿って行くが、時計の右上と右下はただの天井と床だ。特別に何かを示しているとも思えない。
「いや、ちょっと待て。二つのってあるだろ。つまり俺の時計も刻みし円盤だ」
弥彦が腕を上げて腕時計を見る。時計の針は短針がぴったり三時、長針が三十五分で止まっていた。
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