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視界は黒で埋め尽くされ、全ての音がその黒に吸い込まれたかのように、静寂が場を支配していた。物音一つせず、何もかもが暗闇に包まれている。
「ここどこ?」
誰かの声が虚しく響いた。
「誰かいないの?」
その声に呼応するかのように、辺りがパッと明るくなる。天井の蛍光灯が点いたようだ。天井は広く、棒状の蛍光灯がいくつも取り付けられている。それが、部屋の中を照らし出していた。
「教室?」
一人用の机が、部屋の中にキレイに並んでいる。その机の間の床で、セーラー服姿の久美子が身体を起こし、短い髪を撫で押さえながら、黒目がちの瞳をキョロキョロとさせて辺りを見回していた。
長方形の部屋は前後に黒板、左右は壁と窓に挟まれており、全ての窓にはカーテンがかかっていた。
「嫌ああぁぁぁっ!」
久美子がいきなり悲鳴を上げる。
「何だ?」
悲鳴を聞き、教室の後方で詰襟の制服を着た志郎が飛び起きた。ずれた眼鏡を直しながら、声の出所を探す為に辺りを見る。
志郎は印象的でりこうそうな目をしていて、鼻筋の通った、すっきりとしたキレイな顔をしていた。
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