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黒板を見たまま動けずにいた二人は、悲鳴で喉を枯らし、むせ始めた久美子の咳き込む声で、やっと目を離した。
「大丈夫?」
志郎が久美子に近付き、むせる久美子の背中を擦る。
「……しかし、ここはどこだ?」
弥彦は立ったまま教室を見回した。
「学校じゃないか?」
久美子の背中を擦ったまま、志郎が弥彦に答える。
「どこの、学校だよ」
どこのを強調して弥彦は志郎に返した。それに志郎は黙る。志郎にもここがどこかは分からないようだ。
「ごほっ。ありがとう」
ようやく落ち着いた久美子が、志郎にお礼を言う。
「大丈夫?」
「うん」
先に志郎が立ち、立とうとした久美子に手を貸す。
「ありがとう」
素直に志郎の手に掴まり、久美子も立ち上がった。
「お前はここがどこか分かるか?」
弥彦が久美子に聞くが、久美子は首を横に振って否定した。これで、全員がここがどこか分からないことだけが分かった。
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