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「そこどいてろ!」
弥彦が窓に近付きながら久美子に怒鳴り、窓際の机のイスを掴むとそれをカーテンの上から窓に打ち付けた。けれども、窓は割れず、反動でイスが跳ね返る。
「どうなってんだよ!」
イスを置いた弥彦が、机を叩きながら叫んだ。他の二人は青ざめた顔で黙り込んでいる。
扉も窓も開かない教室。
そこに、三人は閉じ込められていた。
その教室は窓を割ることも出来ない異常な空間で、不気味な雰囲気だけが教室を取り巻いていた。
「……ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
黙っていた久美子が、下を向いたまま口を開く。
「どうやってここに来たか覚えてる?」
「は?」
不機嫌な顔の弥彦が高圧的な態度で久美子に聞き返すが、久美子は気にせずに続けた。
「私は覚えてない。何も覚えてないの。どうやってここに来たか。ここに来る前に何をしていたか。どこにいたか」
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