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「あの時計、壊れているみたいだ」
「俺のもダメだな。変な位置で針が止まっている」
右腕に付けている腕時計の表面を、弥彦が指で叩いている。
「僕は時計を持ってないみたいだ」
「私もない。ポケットもからっぽみたい」
久美子が制服のポケットを探っている。志郎もポケットに手を突っ込み、すぐに首を横に振った。
「ん? 何だこれ?」
腕時計を見ていた弥彦が、急に腕まくりをした。
「1?」
腕時計よりも内側に、数字の1が直接腕に書かれていた。擦っても消えない。
それを見て、志郎と久美子も腕をまくる。志郎には2、久美子には3と書かれていた。
「何これ?」
「何かのナンバリングかな?」
他にも何かないか、各々自分の身体を調べたが、何も出てこなかった。
「数字じゃ何も分からないし、身元に繋がりそうな物は何もないか……」
志郎が肩を落とす。もしかしたら何かあるかもと期待していたようだ。
「あとは……」
弥彦が教室をぐるっと見回した。
「この教室の中を探してみるか」
「そうね。何か手がかりがあるかもしれないし」
三人は教室の中を探索し始めた。弥彦は教室前方、黒板周りや教卓の上の箱を調べ、志郎は全ての机の中を覗き込み、久美子は後方の黒板周りや掃除用具入れを調べた。
「何も入ってない」
掃除用具入れを開けて、久美子はため息を吐く。
「そっちは何か見つかった?」
調べ終えた久美子が弥彦の方へ行く。弥彦は教卓の上の箱の前で、久美子達に背中を向けて何かをしていた。それを、久美子がうしろから覗き込む。
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