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舞う桜。霞む夕焼け。 俺たちはまだ、あの日から動き出せずにいる。 *** 夢を見た。 目を閉じているのか開けているのか、わからないほどの暗闇。閉ざされた空間。息がつまるほどの圧迫感。 夢の中の俺は、その暗闇をどこか遠くから見つめている。 子供の泣き声が聞こえた。 暗闇の中、角の方で丸くなって泣いている。 顔は見えない。ずっと泣いていたはずなのに、俺がその子供を認識したのはたった今だった。
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