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悲しくて泣いているのか。
恐怖で泣いているのか。
俺にはわからなかったけど、助けてあげなくちゃいけないと思って声を掛けようとしてーーー、できなかった。
どんな言葉を掛けていいのかわからなかったからだ。
この子を助ける術も、力も俺は持っていない。
どんな力があれば助けてあげることができるのかも、わからない。
だから俺は、その子の泣き声をただ聞くことしかできなかった。
***
「……あ」
広いオフィス。鳴り響く電話、飛び交う会話、慌ただしく動く人。
俺の呟いた声はそんな喧騒の中に溶け込んだ。
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