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「……お前、ここで何してんの?」 「花見ですよ。綺麗でしょう?」 柏木が顔を上げる。 つられるように俺も顔をあげると、一本の桜の木が立っていた。 月明かりの下、風に吹かれた花びらがさらさらと舞い、散っていく。 確かに綺麗だ。だけど何とも言えない儚さも感じる。 それはどこか胸を締め付けられるようで、俺はそれを長く見ていられなかった。 「……綺麗だけど、俺はあまり好きじゃない」 柏木は目を細めて俺を見た。 優しくて、どこか寂しそうな瞳だと思った。
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