2756人が本棚に入れています
本棚に追加
「……お前、寒くないか?」
記憶の波にのまれそうになる前に、俺は気持ちを切り替えた。
あの日のことを思い出すと、いつも際限のない暗闇に落ちていきそうになる。
他人の前で思い出すようなことじゃない。
「寒くないですよ。篠宮さんは寒い?」
「まぁ、ちょっと」
まだ春先だ。昼間はちょうどいいくらいの気温になったが、朝と夜はやっぱりそれなりに冷える。
ビールを飲んだから余計かもしれない。
「じゃあ、俺の隣にきますか?」
「は?もう来てるじゃん」
「もっと近くに」
ってことは、なんだ、二人で密着して体温をわけあうとか、そういうことを言いたいのか?
最初のコメントを投稿しよう!