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柏木は笑った。 笑ったと言うより、微笑んだと言うべきか。 普段は他人を寄せ付けない鋭い瞳が、今は優しく細められている。 「うん。篠宮さんは、絶対言わない」 強い確信を持った口調だった。 柏木にそこまで信頼されているなんて、何だか妙な気持ちになる。 俺の何が柏木の信頼を勝ち取ったんだろうか。 「これは、俺と篠宮さんの秘密」 「……また、責任重大だな」 思わずそんな軽口を叩くと、柏木はまた笑った。 「桜、好きなのか?」 一人で花見をするくらいだから嫌いではないのだろう。 柏木は首を傾げた。 「どうなんでしょう。別に大好きってほどでもないです。でも、特別な存在ではあるかな」
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