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引っ越した理由は、あの事件だった。 あんなことがあった場所にそのまま住み続けることは、幼かった俺にはできなかった。 通学路で事件に巻き込まれた俺は、あの通学路を一人で歩くこともできなかったし、近づくこともできなかった。 事件現場の近くにいる。 ただそれだけで、俺の精神はどうしようもなく怯えていた。 このままだと俺にとって良くない。 見かねた両親がそう決断してくれたおかげで、新たな地で俺は少しずつ平静を取り戻していくことができた。 「子供の頃って、小学生の時?」 「えぇ、そうです。ただ、幼かったし、すぐに名古屋へ行ったこともあり、東京の小学校に通っていた時の記憶はほぼありませんが」 俺は「へぇ……」と相槌を打って、「何歳の時?」と聞いた。
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