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純を叩きまくっていた枝豆のおばさんは気が済んだのか、「あ」と言って俺の方を向いた。
「そういえば、陽平くん、一人で来たの?」
「あ、はい…!今回は持病の療養のためで。今はほとんど発作もないんですけど、来年は俺、受験生だから、今年中に治しきっちゃおうって」
「あら、そうだったの!陽平くんちっちゃいときは重かったものね~!よかったわね、良くなって!お大事にね!」
「はい!ありがとうございます」
そう言って枝豆のおばさんは俺たちに別れを告げ、駅の方へと歩いて行った。
「沢田くん、水谷さんとお知り合いだったんですね」
「うん!まぁ、あんまり話したことないけど…」
「そうなんですか。とても、パワフルな方ですよね」
純は少し困ったようにそう言った。…ちょっと苦手、なのか?
おばさんとは正反対の性格だし。
純が枝豆のおばさんのように大声で笑ってるところは全く想像できない。
おばさんはいいひとなんだけどね。
でもあんまりそういうの言えるタイプじゃなさそうだし…
「…純、もしかしてさっきのおばさん、苦手?」
「……あ、 ばれました?苦手というか、あまり…得意ではないタイプです」
口元に手を添え、ひそひそ声で、にやりと笑ってみせる純。
今まで誰にも指摘されたことはなかったが、嫌なことがあっても顔にあまり出せない性分。
小さなことなら我慢できるし、特に気にはしていなかった。
だから、初めて会う陽平にズバッと言われて少しだけ、驚いた。
「ほら、あの、嫌なことは嫌って、言うんだろ!…それに、俺もいるしな !」
頼っていいよ、と胸を張り、純に笑って見せる。
「…ありがとうございます」
そんな陽平を見て、純は思わず頬が緩んだ。
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それから家に着くまでずっと、純はにこにこと俺の話を聞いてくれた。
純のことも聞きたいなぁ、と思った頃、丁度家に着いてしまった。
ざんねん。
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