夏の始まり

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「陽平、気を付けるのよ!」 「わかってるよ」 「あっ、あんた薬ちゃんと持ってきた?」 「持ってきたって!…もう子供じゃないんだからさ…」 俺は沢田陽平。 東京在住の高校二年生。 今日から夏休みなので、岩手県にある祖母の家に遊びに行く。 小学生の時以来会っていない祖母に会いたい、というのはもちろんだが、ずっと患っていた喘息の療養が一番の理由。 幼い頃は重かった喘息も、高校二年生になった今、徐々に回復してきているが、まだ完治しきっていないためなかなか油断できない。 俺はおばあちゃんの家に行くなんてごく稀で、生まれてからずっと東京に住んでいる。 みんなと同じように走れなくて、 みんなと同じように遊べなくて、 発作が出ると苦しくて苦しくて、 いつも、そんな自分が嫌だった。 だからこの際じっくり治してしまおう、ということで、今年の夏休み中はずっと祖母の家でお世話になることになったのだ。 おばあちゃんの家の周りって、自然がいっぱいで、都会よりも格段に空気がいいんだよね。
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