夏の始まり

7/14
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「あの」 誰かの声で、おばさんが動きを止める。 「彼、嫌がってるように見えるんですけど…失礼ですが、ご関係は?」 ーーそこに立っていたのは… 白皙の美青年。 凛とした空気を身に纏い、俺たちを見つめていた。 「ご、ご関係はって、やーね、恋人同士にでも見えたかしらぁ?」 まだまだおばさんの態度はでかいが、彼の雰囲気に圧倒されて 俺から手を離した。 助かった… …でも、まだ触られている感覚が残っていて、きもちわるい。 ていうか恋人同士なんかに見えるわけないだろ。オカシイんじゃないか。 俺はおばさんに対して腹の底から湧き上がるような恐怖心を抱き、その場から動けなくなってしまった。 すると、その青年はおばさんの言葉を聞き、クスクスと笑い出した。 「な、何笑ってるのよぉ…!」 「残念ながら、彼はそう思っていないようですよ」 お、俺。 青年に突然話を振られ、心臓がどくん、と跳ねた。 おばさんの方をチラリと見ると、バツの悪そうな顔をして「なによ、少しくらいいいじゃない…」と言いながら立ち去って行った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!