イジメ

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ライナードはイタズラがバレた子供の様にビクビクし、レギオン達に背を向けたまま、少しトイレに……。と返した。 「確かにトイレは大切だけど、君の事だ、此処に来る前に済ませてるんじゃないのかい?」 レギオンの推測通り、ライナードは既に用を足している。 「いえ、急にお腹が痛くなったので……。」 ライナードにしては珍しく、歯切れが悪い。 レギオンは不思議に思っていると、ラナと呼ばれた女性がこう言った。 「………………ライ君?」 「…………逃げるが勝ち!!」 ラナと呼ばれた女性がライ君と言うと、ライナードはあからさまに慌て始め、そして扉を勢いよく開け、ギルドの外へ向かって逃げた。 「ライくぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!会いたかったよぉぉおおおおおおおお!!」 普通の人間よりアスタークの能力のおかげでかなり強化されているライナード。本気で身体強化の魔法を掛けてまで全力で逃げるそんな彼を、ラナと呼ばれた女性は前からライナードを抱き締めた。 そのスピードは転移を使ったのかと錯覚してしまうほど速かった。 「ラナ姉やめてくれ!!俺はもうラナ姉に育てられた頃のガキじゃないし、実の姉に抱き付かれて喜ぶ様な歳じゃない!!」 「はぅう~久し振りのライ君だぁ~。」 「ラナ姉話を……って駄目だこの人。完全に意識がどっかに行ってるよ……。」 ライナードは何やら悟った様なカオをしながら、ラナと呼ばれた女性を引き吊りながらギルドマスター室へ戻った。 「やはりすぐに帰って来たか…。」 ラナと呼ばれた女性にルーくんと呼ばれた男性は呆れた顔をしながら額に手を宛て、ライナードに抱き付くラナと呼ばれた女性を見た。 「お久し振りです義兄。」 「あぁ、久し振りだな義弟。」 ライナードはルーくんと呼ばれた男性に久し振りと介錯をし、彼もライナードに久し振りと介錯した。 どうやら知人であるようだ。 「おいルークにアスターシャ君。君達は知り合いなのか?」 レギオンは、アリアレーネとクロウの心情を代弁したかの様に、ルーくんと呼ばれた男性……ルークに話を聞いた。 「この義弟は私の嫁であるラナーシャ・ゼクセレードの実の弟だ。 だからコイツは義弟。」 簡潔な説明だが、その説明には少なからず棘が含まれていた。
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