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 水曜午後のホームルームも終わりに差しかかったところだった。クニがいきなり手をあげた。司会はいつも直近の成績がクラスで一番いい生徒にまかされている。3組の場合は当然、菱川浄児(ひしかわじょうじ)の指定席だ。 「はい、鳥居(とりい)くん」 「みんな、秋の東島祭(とうとうさい)でうちのクラスの催(もよお)しもの、どうする?」  生徒たちがざわついて、教室の雰囲気がにぎやかになった。夏の総合運動会と秋の文化祭は、進駐官養成高校の年間スケジュールの目玉だった。担任の月岡鬼斎(つきおかきさい)先生は義手の腕を組んで、目を細めている。怒っているのか、喜んでいるのか、表情だけでは計りしれなかった。東園寺崋山(とうえんじかざん)が手をあげた。
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