第1章

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小学1年の時、父が逝った。 当時は、幼くてその意味が理解できていなかった。 その頃から母は、父の実家住みだった事もあり、形見の狭い思いをしていた。 母は、父の遺してくれたお金で家を建て、母と自分、そしてまだ1歳になったばかりの双子の妹達との四人生活が始まった。 仕事を掛け持ちして、懸命に自分達を育ててくれる母の力になりたいと、家事を進んでやった、掃除、洗濯、食事と、拙いながらやれることはやった。 中学に上がり、父が居ないことで苛めにもあった、だから高校はなるべく地元から遠い高校にして、寮に入った。 卒業して、専門学校に入った頃、友達の紹介で今の妻と出会った。 父を早くに亡くした自分は、兎に角幸せな家庭を早く持ちたいと、いそぎすぎたのかもしれない。 理想と夢の中のふわふわした生活、綻びやすれ違いが生じ、自分が望んだことなのに、窮屈に思えていた矢先、高校時代の友人が亡くなったと連絡が入った。 葬儀が終わり、当時親しかった、仲間と担任を入れて、居酒屋で故人を偲んで呑んでいた、友人の為の席のグラスに酒を注いで。 「こんなに早く逝っちまうなんて」友人の山崎がビールを煽りながら言った。 「確かに早すぎるよな」同じく友人の吉川、大森、松島、坂口も口を揃えて話していた。 皆酒を煽って悲しみを少しでも和らげようとしていたが、酒の飲めない自分は烏龍茶で皆の話をひたすら聞いていた。 店が閉店を迎え、店を出るなり担任が口を開いた。 「今日は、俺が奢るから次はお姉ちゃんの店に行くぞぉ!」そう言いながら、ふらつく足取りで夜の繁華街を進んだ、素面の自分は明日の仕事の事を考えながら、担任に付いていった。
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