「夕明り」

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 夏のパレードから解放された商店街が、少し寂しく見えるのは、未だあちらこちらに貼られたポスターのせいかもしれない。  誰にも興味を持たれず、それでも必死に、傷だらけになりながら電柱にしがみついている痛ましい姿に、少し笑う。  そんなに頑張らなくても良いのに、なんて意味のない励ましを唱えれば、その後ろに貼られた真新しいポスターの敬礼した写真にバカにされている様な感じがて顔を引き締めた。  剥がれかけ、誰にも相手にされなくなった商店街お手製のパレードのポスターと『陸上自衛隊隊員募集』と書かれた若者が鎮座する綺麗なポスター。  おそらく自分は前者、なのだ。  ベンチに腰かけた私の前をベビーカーを押す若い母親が通りすぎていく。  その中に視線を向ければ赤ちゃんが興味津々な様子で辺りを見渡しているのが窺える。  不意に視線が私に止まった瞬間、赤ちゃんがグズリだした。  「どうしたの」と母親が抱き上げる。  そんなやり取りを眺めながら、コンビニで買った紙コップの珈琲に意識を戻せば、その温もりが心に染みた。  私は悪くない。  「よし、よーし」  母親が背中を擦ると落ち着きを取り戻す赤ちゃんに、自分が抱き締められた過去の心地好さを思い出し、少し視界が滲んだ。
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