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ベッドの端までじりじり下がっていくと、私は壁に背中を当て激しく手を振りまくる。
『やっ…ズ、ズホンはっ……下は一人で穿けるからっ!』
スウェットの上はともかく、下まで綾瀬君に穿かせて貰うなんて、とてもじゃないけど恥ずかしくて出来ない!!
ずぃっとベッドの側まで寄ってくる彼に、いいからと必死にジェスチャーで訴えればー……
『はあ?』
綾瀬君は眉を寄せ、何言ってんの?って呆れた顔でズボンを投げつけてきた。
『バーカ。誰が穿かせてやるって言ったんだよ』
子供の着替えじゃねぇんだから、と捨て台詞を吐くと、綾瀬君はわざと私の顔にズボンを押しつけ去って行った。
ー………。
目を丸くし呆然と部屋の扉を見ていた私は、くしゃと瞳を歪める。
は、、本当に……
バカみたいだ……。
綾瀬君に自意識過剰と言われ、心底安心している自分がいた。
これまで母親の愛人と同類の男ばかり、見てきたからー……
着替え終わった後、恐る恐る部屋を出るとー……
煌々と灯りで照らされたリビングで、ソファに蹲った綾瀬君が寝息を立てて眠っていた。
(…気持ち良さそう)
不意に近づくと、思いの外あどけない綾瀬君の顔があってー……妙に和んだ。
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