わたしの日常

8/25
前へ
/883ページ
次へ
『えっと……迷惑、なんじゃない…?』 何もわざわざ不機嫌オーラを纏う人の傍にいなくっても…と足を引けば、紗知が可憐な外見とは真逆な力で私の手を掴んだ。 そっか…紗知は綾瀬君が好きなんだもんね…。 どうしてもお近づきになりたいのは、紗知の方なんだ。 『いや!全然迷惑なんかじゃないよー……ほら、綾瀬がいつまでもそんな顔してるからだぞ?』 おまえだって女苦手なの克服したいって、前に言ってただろ? 爽やかに笑ってたしなめる木崎君は、面倒臭そうな顔してる綾瀬君とは正反対に人が良さそうだ。 私と目が合うと、何故か照れ臭そうな表情で彼は自らの髪をわしゃわしゃ掻く。 『……あー、駄目だぁ……三河さんに見つめられたら、なんか緊張する…』 参ったなぁと言って、端正な顔を大きな掌で塞ぐ木崎君に、何を返していいかわからないでいるとー…… 突然、紗知がパンッと手を打って、天真爛漫な笑みを浮かべた。 『わ~あ!もしかして木崎君ってば、亜理子に気があるのぉ!?』 途端、ざわつく講義室にも目を暮れず、むふふ!と嬉しそうに笑う紗知。 『うん……まぁね、、実は一目見た時から気になってたんだよね。ライバル多そうだけど…』 欲望が一切ない、こんな純粋な眼差しを注がれたのは生まれて初めてだったから、ちょっとだけ胸が高鳴った。
/883ページ

最初のコメントを投稿しよう!

837人が本棚に入れています
本棚に追加