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『えっと……迷惑、なんじゃない…?』
何もわざわざ不機嫌オーラを纏う人の傍にいなくっても…と足を引けば、紗知が可憐な外見とは真逆な力で私の手を掴んだ。
そっか…紗知は綾瀬君が好きなんだもんね…。
どうしてもお近づきになりたいのは、紗知の方なんだ。
『いや!全然迷惑なんかじゃないよー……ほら、綾瀬がいつまでもそんな顔してるからだぞ?』
おまえだって女苦手なの克服したいって、前に言ってただろ?
爽やかに笑ってたしなめる木崎君は、面倒臭そうな顔してる綾瀬君とは正反対に人が良さそうだ。
私と目が合うと、何故か照れ臭そうな表情で彼は自らの髪をわしゃわしゃ掻く。
『……あー、駄目だぁ……三河さんに見つめられたら、なんか緊張する…』
参ったなぁと言って、端正な顔を大きな掌で塞ぐ木崎君に、何を返していいかわからないでいるとー……
突然、紗知がパンッと手を打って、天真爛漫な笑みを浮かべた。
『わ~あ!もしかして木崎君ってば、亜理子に気があるのぉ!?』
途端、ざわつく講義室にも目を暮れず、むふふ!と嬉しそうに笑う紗知。
『うん……まぁね、、実は一目見た時から気になってたんだよね。ライバル多そうだけど…』
欲望が一切ない、こんな純粋な眼差しを注がれたのは生まれて初めてだったから、ちょっとだけ胸が高鳴った。
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