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『亜理子の黒髪、ほんっと綺麗だよねぇ!大人っぽくて羨ましい…』
『そんな事ないよ。紗知の髪こそ栗色の髪の毛、いつもふわふわ揺れてて可愛いじゃない』
私が手を伸ばして彼女の髪を弄ってみると、くすぐったそうに笑って紗知は肩を竦めた。
この柔らかい手触りのセミロングヘアが、彼女のトレードマーク。
好奇心にくるくる揺れ動く丸っこい瞳と、長い睫、男がキスしたくなる小振りの唇も。
水商売やってそうな男の目を引く、派手な見た目の私とは対照的な容姿。
『綾瀬君って、自分から女の子に話かけないよねぇ…』
『うん』
『でも彼と同じ高校の友達に聞いたら、もっと昔は取っつきにくかったんだって…!』
今はぶっきらぼうだけど、話せばちゃんと返してくれるみたい。
『へぇー』
『もうっ!!亜理子ってば真剣に聞いてよぉ!ほんっと綾瀬君に興味ないね?』
『あったら困るでしょう?紗知、さっき綾瀬君を好きにならないでって言ってたじゃん』
外見同様、興味なさげに頬杖ついて、シニカルに微笑んでみせるとー……紗知はあどけない子供みたいに唇を尖らせた。
こんな無邪気な姿を知ってるから、彼女に何されても憎めない自分がいる。
『聞くところによると、綾瀬君って好きな子がいたらしいよ』
どんな子だろうと熱っぽい目を彼に向ける紗知から視線を外し、再び黒髪の青年に目を這わせた。
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