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仕方なく
俺は
自分で自分を汚した
ジンジャエールを
拭きながら
マシロの隣に座り
あの
黒い瞳で
カメラを見つめる
マシロを眺めた
「ホントにファンなのかよ」
コクッ
マシロは
カメラを拭きながら
俺も見ないまま
うなずいた
「だから俺の親父に
頼んだのか?
俺のところで
働きたいって」
コクッ
クスッ
まるで
小さな子供が
大事なミニカーでも
見つめるように
マシロは
カメラを見ていた
「せっかくだ
ちっと磨いといてくれ」
おれは
カメラを手入れするための
道具一式を
テーブルに置いた
「え・・・」
マシロは
やっと俺を見て
あの
黒い瞳で
俺を
見て
まばたきもせずに
俺を
見て
「いいんですか?」
って
聞いたんだ
吸いこまれそうな
黒い瞳で
「あ、あぁ・・・
いいから
やってろ。
なんか・・・
晩飯買ってくるから」
マシロの瞳を
見ていたいのに
マシロに
目を合わせてもらいたいのに
マシロに
見つめられると
なぜか
逃げるように
俺は
視線を泳がせた
その時
今日撮影した
あの瞳を
もう一度
ゆっくり見たい
そう思った
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