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カチャカチャ…
「ん~っ。酸っぱいね!この苺」
「優は食わねーの?練乳かけたら甘いぜ」
透はそう言いながら、右手に持ったフォークをソファーで寝そべっている優の方に差し出した。
優は振り向きも返事もせず、雑誌を見ている。服の裾が手首までで短くて、シルバーのブレスレットが揺れていた。
inチョコ寮202号室、優の部屋。
今日は日曜日なので苺学園は休み、軽音部も休み。普通の土日なので実家には帰省しない。そんな普通の、春の一日。
しかし今日は朝から大収穫。
十時頃、いつものあの女の先生が訪れて来て
「ちょうど食べ頃なの」
と笑顔で差し出した両手のカゴの中には、大粒の苺の山。
話を聞くと、どうやら彼女が学園の庭で栽培しているらしい。
しかし、どこがどう食べ頃なのかと思うくらいに苺は酸っぱい味をしていた。
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