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「俺、再来週、東京に戻るんだ」
「……っ」
え? 今、なんて言われた?
再来週? 戻る?
……うん……うん、そっか。わかってたよ。こんな日が来るってことは。ちゃんと、わかってた。
ただ、思ってたよりも早かったってだけ……。
「そ、そう! 急やね。もう研究は終わりそうなん?」
「あぁ」
「……そう。えっと……あっ、そうや! 送別会せなあかんねっ?」
「おい」
「ご馳走いっぱい作って、盛大にお見送りしたげるから安心してね!」
「おい、こっち向けって」
振り向けるわけない。今、零央の顔を見てしまったら……。
「ケーキは何がいい? 特別にリクエストには全部応えることにするから、何でも言ってくれていいよー」
「初琉っ!」
強引に身体を半回転させられて、抱きしめられた。首の後ろに回された手は力強く、抗うことを許してはくれない。
「こんなに泣いて……何が送別会だ。ふざけんなっ。あぁ、もう! 泣きすぎだろっ!」
一度離れて、私の頬を濡らしてる涙を親指で拭ってくれるけれど、止まらない涙が次から次へと流れ落ちるのに、悪態をつき始める。
ごめん。ごめんね? 鬱陶しいよね?
「零央……離して」
どっかで、顔洗ってくるからね?
「黙れ。まだ話の続きがあるのに、勝手に先走って泣くようなヤツは、もう喋るな。これ以上、余計なこと言ったら口塞ぐぞ」
「……続き?」
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