2 燃え立つ想い

6/7
97人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「初琉。お前、短大を卒業したら東京に来てくれないか? いや、絶対に来い」  え……? 「初琉? 聞こえたろ? 返事は?」  返事? 何に対しての返事? 「……もう一回」 「あ?」 「もう一回! 短大が何って?」 「はあぁ? 確実に聞こえてただろ! 馬鹿か!」 「アホちゃうもん! 短大卒業して東京に行って、私、何するん?」  零央の真意が探りたくて、目を見て尋ねようと凝視したけど、目線は明後日の方向に逸らされてしまう。 「聞こえてんじゃねーか! 何するって、お前……アレだ、俺ん家に来いってことだよ」  私の肩に両手が乗せられた。次いで、小声で告げられる。依然、その視線は景色をさまよったまま。  えーと、ちょっと整理しよう。まず、東京に来いって言われたよね? 零央の家に。それで、時期は私が短大を卒業してから……ん? それって、まさか……。  あははっ! まさか、やんねー。いくら何でも飛躍しすぎやわ、私っ。きっと、こっちの意味やん。 「あ、そっか。卒業旅行に呼んでくれるん?」 「……っ、馬鹿じゃねーの? 旅行じゃねーよ! 嫁に来いっつってんだよ!」 「え……」  よ、め……? 「……あ」  真正面から怒鳴りつけるように言われた言葉。それが頭の中で反響しまくるのに任せながら見上げてみれば、失言しましたと言わんばかりに口に片手を当てて固まってる姿が――。  うわぁ、初めて見るかも。  うっすらと色づいた頬と、泳ぎまくる目線。感情丸出しの零央の顔、初めて見るー。  でも、でも! そんな表情ですら色っぽいって、どんだけよ、この人! 「あーあ。柄にもなく照れると、ロクなことがないな」  あ、もう立て直してきた。 「もう、聞こえなかったなんて言わせねーからな」  しっかりと抱きすくめられて、唇が触れる寸前の距離で目が合う。 「榊初琉さん。俺と結婚してください」 「……無理」 「は?」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!